PWSA - NPO法人 パーソナルウォータークラフト安全協会

PWC HOW TO

発航前の点検

マシン各部の点検箇所と点検のポイント

マシン各部の点検箇所と点検のポイント

水面に降ろす前の点検

点検にあたっては、一旦水面に降ろしてしまってからでは点検できない箇所を重点的に点検します。各点検は指差ししながら行うと点検のもれを防ぐことが出来るので、目で見るだけでなく、必ず指差しをしながら点検を行うことを習慣づけておきましょう。
取扱説明書に従って点検をおこないましょう。

エンジンルームの点検

まず一番最初に、シートを取り外しエンジンルームの換気をおこないます。エンジンルーム内全体を見渡し、錆や破損個所がないかどうか、エンジンルーム内にビルジが溜まっていないか、燃料タンク油量などを点検します。水上オートバイの場合、燃料タンクはエンジンルームの中に設置されているケースが大半を占めます。エンジンルームの換気を怠ると火災または爆発を生じる恐れがあります。エンジンルームにガソリン臭気(燃料漏れ)や電装系接続の緩みがあるときは、エンジンを始動しないでください。

バッテリの点検

エンジンルームの点検が全て完了したら、次にバッテリの点検です。バッテリ本体がしっかりと固定されているかを確認します。バッテリ本体の固定には、大半のモデルはゴムバンドを使用しており、ゴムは長年使用していると劣化してきて、収縮性がなくなってきますので、バンドを引っ張ってみて弾力性があるかどうかを点検しておきます。ゴムがひび割れたような状態になっている場合には、バンド自体を交換してあげましょう。
水上オートバイ用のバッテリは、容量自体が小さいため、比較的簡単にバッテリが上がった状態になってしまいます。特に、使用間隔が開いてしまう人(たまにしか乗らない人)は要注意です。バッテリの液量は規定量入っているか、ターミナル端子はゆるんでいないか、電圧コードには破損箇所などの傷がないか、などのポイントを確認します。

バッテリの点検

自動車の場合、ほとんどの人はエンジンルームを点検していないのが実態でしょうが、水上オートバイは自動車に比べ様々な点で「過酷な条件で使用」しているため、同じパーツでも傷み方は全く異なります。第一には、海水や水の影響により金属部分にダメージが発生しやすいです。次に、振動・衝撃の点が挙げられます。
発航前には必ず点検をおこないましょう。

乗艇方法

さまざまなシチュエーションでの乗艇方法

乗艇前に

操船者、同乗者全員が、身体に合ったライフジャケット、ウェットスーツパンツ(ボトム)等適切なウェアとシューズ、手袋、ゴーグル(保護眼鏡)を着用しましょう。
落水による水面の衝撃やジェットノズル近くの強い噴流を受けた場合、通常の水着では下半身開口部(膣や肛門)を十分に保護できず、大きな怪我を負うおそれがあります。
身体を保護できるウェットスーツパンツ(ボトム)等を着用しましょう。

同乗者を乗せるときは

定員と最大積載重量を守りましょう。
同乗者を乗せた操船は高度な技量が必要となりますので、一人での操船に十分に慣れるまでは同乗者を乗せないようにしましょう。
同乗者がきちんと着座し、前の人、または取扱い説明書に記載されている部位にしっかりつかまっていることを確認してから発進しましょう。
操船者の前に同乗者を乗せてはいけません。

ビーチからの乗艇

ビーチからの出艇・乗艇する場合、常に波の方向・大きさに注意を払っておかなければなりません。また、初めて出艇するビーチなどでは、突然水深が深くなっている所などがあるかもしれません。水中も含めた周囲全体に注意が必要です。
ビーチからの乗り込みの基本的な手順としては、まず水深60cm~90cm以上の水深の場所までマシンを持っていきます。
乗り込み時の水深はメーカーによって異なるため、取扱説明書を確認しましょう。
後方より操船者が先に乗り込み、バランスを取りながら順次同乗者を乗せます。
乗艇中は必ずエンジンを停止しましょう。

ビーチからの乗艇

桟橋からの乗艇

マリーナなどのように桟橋・浮桟橋があるところからの乗艇は、普通のモーターボートと同様、横付け状態で艇体の横の部分から乗り込む形となります(ただし、スタンディングタイプの場合は、桟橋からの乗り込みの場合も後方から行います)。

操船者が最初に乗り込み、左右のバランスをとりながら、順次同乗者を乗せていきます。
同乗者には、飛び乗りをさせないように注意しながら、乗り込んだ人から順にシートに座らせます。

桟橋からの乗艇

全員が乗り込み、係留ロープを外した後で「エンジンがかからない」とならないためにも、桟橋の利用できる所では、しっかりと係留した状態でエンジンをアイドリングにかけ、しばらく暖気運転をした後、一旦エンジンを停止し、同乗者を乗せる、という手順が望まれます。

桟橋からの乗艇

同乗者の乗り込みの際に、左の写真のように次の同乗者の乗り込みの手助けをしようとするあまり、艇の片側に体重を掛けすぎると、バランスをくずし転覆してしまう危険があります。

桟橋からの乗艇

また、桟橋とマシンとの間に手や足を入れると大変危険です。絶対に止めましょう。

桟橋からの乗艇

これだけは知っておこう

ジェットの基本性能を正しく理解する

舵効きについて

水上オートバイは、勢いよく水を噴射することで推進し、方向転換はジェットノズルの噴射する向きを変えて行います。
水上オートバイを旋回させたり、障害物を避けたりするためには推力が必要です。エンジンが停止すると水上オートバイの進路変更ができなくなり事故を起こす可能性があります。
障害物を避けたり、進路変更するためには、エンジンを停止しないで、スロットルレバーを操作し推力を確保しましょう。
アイドリング状態であれば推進力はそれほど大きくないので、いわゆる「行き足」程度で航行することはできます。しかしながら、エンジンを暖気運転のため始動させて、係留ロープをしっかり結ばない状態でマシンから離れたりすると、帰ってみたらマシンがどこかに走って行っていた、となる可能性があるので、こういうことにならないように注意しましょう。

その場回転

水上オートバイは船底に突起物がないため、行き足のない状態からハンドルをどちらか一方に切ると(アイドリング又は低速状態)船尾が横スベリをするような形で「その場回頭」を行うことができます。

その場回転

自動排水機能

ほとんど全てのモデルに取り付けられている機能で、簡単に図解すると、左のイラストのようになっています。
水上オートバイでは「転覆」という状況に遭遇する可能性が常に考えられ、また波のあるところを走行している時には波をかぶって船内にどうしてもビルジが溜まってしまうことも考えられます。このため、水上オートバイには「ビルジポンプ」のように船外に水を排出するためのパイプ(といってもモーターが付いているわけではなく、簡単にいうとタダのパイプ)が取り付けられています。
水上オートバイでは、エンジンルームの最下部にビルジ吸い込み口が設置されていて、それにパイプがつながっております。このパイプの端はジェットパイプの一部に出ています。
ジェットパイプ内は走行中勢いよく水が流れており、ベルヌーイの定理(流れの速いところは圧力が低くなる)によってパイプの出ている部分の圧力は低い状態となります。このため、ビルジは「吸い出される」ような形となり、噴射水と一緒に排出される、という仕組みになっています。連続して転覆をした場合などでも、高速でしばらく走行すると、この自動排水機能のお陰で船内のビルジを抜くことができます。

自動排水機能

不沈構造

すべての水上オートバイは、船内に目一杯水が入っても絶対に沈まないように作られています。船内各部には浮力体(発泡ウレタンなど)が詰められており、水没してしまうことがありません。
ただし、転覆したままにしておくとエンジン内に水が入って再始動できなくなる恐れがあるので、できるだけ速やかに復原しましょう。

日常メンテナンス

ゲレンデから戻ったら必ず実施。日常の保守・点検

アフターフォローも忘れずに

水上オートバイを楽しんだ後は、体も疲れ切っていることでしょう。マシンも同様です。塩水をかぶったり、波の衝撃に耐え、1日の役目を終えたのです。使い終わった後の、ちょっとした手入れがマシンを長持ちさせる秘訣であり、次回の楽しさを約束してくれるものなのです。
取扱説明書に従って、使用後のお手入れをしましょう。

船体の水洗い

海で使った後、塩水をかぶった状態のまま乾燥させてしまうと、海水は塩の結晶として色々な場所に残ってしまいます。
塩の結晶はなかなかの曲者で、錆を発生させるばかりか、メーターパネルなどのアクリル板などを、簡単に傷つけてしまう程固く、丈夫なかたまりなのです。船体外部全体にくまなく清水をかけ、柔らかい布やスポンジなどできれいに洗ってやります。
また、砂浜などで使用した後は塩水だけでなく細かい砂が付着していますので、先ず最初に充分にホースで水をかけた後に布などを使わないと、布に砂が付いた状態の「サンドペーパー状態」でこすってしまうことになります。

船体の水洗い

エンジンルームも同様に水洗いしておきます。

エンジン内部(冷却系統)の水洗い

水上オートバイは、海水を吸い込んでエンジンの回りを循環させています。その結果、冷却系統の中は塩だらけになっています。このまま放置すれば、冷却系統は塩で目詰まりしてしまい、そのまま使用を続けるとオーバーヒートすることにもなりかねません。
エンジン内部(冷却系統)の水洗いのためには、水洗ホースを取り付け、そのホースに水道のホースをつなぎます。エンジンを始動した後、水を出し、しばらくアイドリング状態で運転を続けましょう。
水洗終了後、水を止めてからエンジンを停止します。
冷却水なしでエンジンを運転し続けると、重大な損傷を引きおこす可能性があるため注意しましょう。

この状態で、エンジン内に正常に水が通っているかどうかは、検水孔から水が出ていることで確認できます

エンジン内部(冷却系統)の水洗い

エンジン内部(冷却系統)の水洗いに要する時間は2~3分間で充分です。面倒くさがらずに使用する都度、必ず行うように習慣づけておきましょう

エンジン内部(冷却系統)の水洗い

船内の水抜き

エンジンルームなどを水洗いした水は船内の底に溜まります。この水を抜くためには船尾の最下部にあるドレンプラグを外します。

この状態で、エンジン内に正常に水が通っているかどうかは、検水孔から水が出ていることで確認できます

船内の水抜き

防錆処理

マシンの各部には様々な金属部品が使用されています。
金属部分は水洗いだけでは不充分で、グリースや防錆潤滑剤などで防錆処理を行っておいたものと、そうでないものでは傷みの進み具合で随分と差がつきます。
防錆処理を行うべき箇所は、一言で言えば「金属が使われているところ全て」です。
取扱説明書に従って、防錆処理をおこないましょう。

防錆処理

その他のメンテナンス

バッテリはターミナルを外し、充電しておきます。また、消耗部品は定期的に交換するなど、トラブルを未然に防ぐための努力を日頃から怠らないことが肝心です。まだ正常に作動しているのに、いかに消耗部品とはいえ交換するというのは結構勇気が要る行為です。しかし、「まだ使える」がエンジントラブルの原因になってしまったり、最悪の場合には大事故につながることも考えられます。日頃からメンテナンスをキッチリと行っている人は、少しの変化でも見落とさずに、早め早めの対策がとれるようになります。マシンが自分の体の一部に感じられるようになるまで、大切に使ってあげてほしいものです。
シーズンの最後に使用した後には、次回の使用までの間隔が長期間空いてしまうため、日頃のメンテナンスに加え、スパークプラグを外してシリンダー内に浸透性防止錆剤をスプレーしておくことも必要です。
取扱説明書に従って、保管のためのメンテナンスをおこないましょう。

その他のメンテナンス

リカバー方法

慌てないことが最大のコツ。180度転覆時マシンのリカバー方法

転覆からの復原

水上オートバイの大半のモデルは、ウォーターマフラーがエンジン本体の左側に取り付けられており、復原する際に、後方から見て反時計回りに回転させると、マフラー内の水がエンジンに流入する恐れがあります。このため、復原のための動作は「後方から見て時計回り」が必須条件となります。どうしても覚えられないという人もご安心を!船尾には復原方法を説明したステッカーが貼られていますので、しっかり確認しましょう。
スタンディングタイプや小型のシッティングタイプの場合には、ガンネルに乗らなくても後方から両手でガンネルをつかんで復原させることも出来ますが、女性など腕力のない方は無理をせずに、体重を利用して復原させるようにすれば良いでしょう。いずれにしても、回転方向に充分注意して慌てず確実に復原させるようにしましょう。

転覆からの復原

水上オートバイの右後方(転覆した状態)に回り、デッキ後部やポンプカバーをつかみ、もう一方の手でガンネルを押さえます。

転覆からの復原 1

片足をガンネルにかけ、両手でしっかりと体を支えながらガンネルに体重を乗せていきます。

転覆からの復原 2

両足をガンネルに乗せ、つま先立ちの状態でガンネルに全体重を乗せます。

転覆からの復原 3

体重の軽い人は水上オートバイを揺らすようにして勢いをつけます。
いわゆる「へっぴり腰」のような態勢で、デッキ後部やポンプカバーを引っ張るよう引き起こしていきます。

転覆からの復原 4

水上オートバイが回転を始めたら、下敷きにならないように、また元に戻ってしまわないように注意しながらデッキ後部やポンプカバーを引き続けます。
必要ならばできるだけ船体の遠くの部分をつかんで完全に引き起こします。

転覆からの復原 5

復原する方向に回転力がついたら、水上オートバイを突き放すようにして、マシンの下敷きにならないよう注意します。

転覆からの復原 6

PWC構造・機能

PWCの基本構造を理解する

PWC構造・機能

推進のメカニズム

PWCの「ジェット推進機構」とは、船底にある吸水口から吸い込んだ水を「インペラ」と呼ばれるプロペラで加速し、ガイドベーンで吹き出す水流を真直ぐな流れとして船尾から勢いよく吹き出して推進するものです。進行方向を変える場合には、ハンドルを切って、ステアリングノズルの向きを左右に変化させ、噴射する水の向きを変えます。方向を変えるためには、スロットルレバーを操作して、推力を確保することが必要です。

推進のメカニズム

後進のメカニズム

後進する時には、ステアリングノズルの後ろにリバースゲートが降りてきます。この結果、ゲートに噴射水がぶつかり、前方方向に水が流れます。船外機や船内外機のプロペラのように、回転方向自体を変えて前・後進するわけではありませんので、後進時は、舵のコントロールはほとんど効かないと考えておいた方が無難です。高速前進中に無理に後進に入れようとすると制動力が過大となり乗船者が前方に投げ出されたり、PWCが安定を失い転倒し大きな事故に至ることがあります。またリバースゲートも破損してしまいます。

後進のメカニズム

エンジンストップ機構

エンジンを止めるためには2つの方法があります。ひとつはエンジンストップボタンを押す方法。もう一つは緊急エンジン停止用のコードを引き抜く方法です。緊急エンジン停止用のコードを身体の一部に取り付けておけば、操船者が転倒したり落水した場合にコードが抜けて、自動的にエンジンが停止できるようになっています。

スタート制御機構

一部のPWCでは、イモビライザー付の専用キーを入れないとエンジンが始動できない機構が取り付けられています。